あさか開成 校長雑感

「福島ビビンバ」を食す

昨日の午後4時頃、留学生のチョ・ソンフンくん、2年生の栗林優羽さん、寺山緒捺さんが、校長室を訪ねてきた。今月の10日に仙台市で開催される「ご当地!うまいもん甲子園」北海道・東北大会に出場するメンバーである。ソンくんより、大会で出品する「福島ビビンバ」の味を確かめて欲しいとお願いされ、吉田教頭、山見事務長とともに試食することになった。彩り鮮やかに盛り付けで、食すことをためらうほどであった。ソンくんより「よく混ぜてください」と言葉をいただいた。その後、ソンくんは「ビビンバ」は「混ぜる」という意味で、混ぜ合わせることは、お互いによく理解し合おうという考え方に非常に似ている。韓国と日本の食材を混ぜ合わせると言うことは、韓国と日本を良く理解しようということ、今のあさか開成高校です」と「福島ビビンバ」を考案した理由を語った。その言葉の中には、ソンくんの韓国と日本をつなぎたいという強い気持ちが表れているような気がした。

本日の福島民報新聞にも、ソンくんたちの記事が載っておりますので是非ともご覧ください。

ソンくんは、本校に来た平成30年度の長期外国人留学生である。長期外国人留学生とは、1年間、学校に在学する留学生を指している。ちなみに、1年に満たない留学生を短期留学生と呼び、半年、1ヶ月ほど在学する。震災前は、本校には、3・4人の長期外国人留学生が在学していたようであるが、震災後は放射線の影響で外国人留学生そのものが途絶えてしまった。その外国人留学生が復活したのが平成27年度であった。平成27年度の長期外国人留学生は、ホンジュラスから来たディエゴくんであった。ホンジュラスは現在も国内の治安が悪く、ディエゴくんが日本の平和な暮らしぶりを見て驚いていたことを覚えている。平成28年度は、ガーナのデムくんであった。デムくんは、日本文化をこよなく愛し、剣道部に所属し、部員以上に熱心に練習していていた。平成29年度は、ガーナのリズさんと中国からの長源くんである。2人とも、少し人見知りで、優しい人物であった。ソンくんを含めて、どの留学生も、夏休み前には外国人留学生であることを意識しなくなるくらい同化していった。留学生だけではなく本校生徒を含めた子どもたちの順応性の高さには驚かされてしまう。しかし、それは非日常が日常に替わることを意味しているわけではなく、子どもたちは、多くのことを感じ取り、課題発見の機会としている。デムくん、リズさんが在学していたときには、生徒たちはアフリカの児童労働について関心を高め、児童労働撲滅のためにフェアトレードについて研究をし、郡山フェアトレードマップの作成やチョコ募金等の行動へとつなげていった。また、長源くんが在学していたときには、日中の若者同士の交流を目的とした中日友好高校生訪中にも多くの生徒が参加し、日中関係を考える機会となった。ビビンバではないが、「交わる」ことによって、人は、本当の意味で気付き、考え、行動する。情報を得ても、他人事としか考えられない時は、人は動かない。情報を得て、自分自身の、または自分のすぐ近くの隣人の問題として意識した時に、人は初めて考え、動く。高校生の間にそのような機会に恵まれることは非常に重要なことであろう。