あさか開成 校長雑感

マスクから考える社会変革

20年程前、イタリアを一人で旅行したことがある。

一人旅には若干の不安や寂しさがあるのは確かだが、

一人旅でしか味わえない醍醐味があり、

その一つが、やはり一人旅をしている人との出会いだ。

 

フィレンツェからローマに向かう電車の中で

同年代のアルゼンチンの女性と知り合い、

ローマでの数日、行動を共にすることになった。

 

二人で楽しい時間を過ごしていたある日のことである。

教会で見かけた日本人の旅行客の中にマスクをした一人の男性がいた。

それを見たアルゼンチン人の彼女は、

顔をゆがめて声を潜め、ものすごく気味悪そうに

「あれは何?彼は病気なの?」と聞いてきた。

「病気じゃないと思う」と答えたが、

腑に落ちず、落ち着かない様子であったことを記憶している。

 

日本ではインフルエンザの予防や花粉症対策として

マスクをすることは一般的だが、

マスクをつけるのは病気である場合やなにかやましいことがある場合だ、

というようなイメージを持ってきた国もある。

 

事実、2017年10月にオーストリアで「覆面禁止法」が施行されたのだが、

日本の外務省は次のようなことを旅行者に呼びかけている。

「日本で売られている一般的なマスクがこの法律の取り締まり対象になる可能性があり、

トラブルを避けるためオーストリアではマスクを外すこと」

 

それからわずか2年半、

今年4月、オーストリアでは店舗内でのマスク着用が義務化され、

ドイツやイタリアなど他の国々でも

公共交通機関内でのマスク着用などが勧められている。

マスクをネガティブに捉えていた国の人々にとっては

大きな価値観と行動様式の転換であったに違いない。

 

新型コロナウイルスがこの世の中に現れたことで、

大きく社会が変わる、変わらざるを得ないと多くの人が言っている。

そうであれば社会に生きる者は、

その変化をマイナスと捉えるのではなく

より進化した社会へ変化させるよう行動しなければならないのだと思う。

 

いよいよ6月1日より、全面的に授業が再開される。

コロナとの共生の時代に必要な社会の変革については、

学校社会も例外ではない。

新しい学校生活様式で自分と家族と友達を守り、

よりよい社会づくりに貢献しよう。