あさか開成 校長雑感

朝河貫一博士没後70年記念シンポジウム

朝河貫一博士の命日となる8月10日、福島市のとうほう・みんなの文化センター(県文化センター)で朝河貫一博士没後70年記念シンポジウムが開催されました。本校より、朝河貫一顕彰協会によりアメリカ研修に派遣された渡邊拓真くんが、このシンポジウムに参加し、アメリカ研修の体験をもとにその成果を発表するとともに、パネルディスカッションのパネリストとして自分の考えを述べました。

このシンポジウムで、とても印象に残った言葉がありました。『無争の迎合』という言葉です。朝河博士は、日本人の国民性について、「国のためならば正義に反しても許され、正しい個人の名誉を傷つけても許される、というような思想が未だ日本から脱していない。この思想の裏を返せば、一時の国利を重んじるあまり、永久の国害を論ずる人をさえも非愛国者とする傾向があるがために、識者は世間の憎悪を恐れて、国の大事に関しても、隠しだてをせず堂々と言うことができない状況に至っているのである。あるいは、識者自らが無意識のうちにそうした思想に取り込まれてしまって、独立の思考をすることができなくなっているのである」と述べています。そうした考えのもと、早稲田大学の甚野教授はパネルディスカッションの場で、「『無争の迎合』に陥ってはいけない。朝河博士は、民主主義社会をつくるためには、議論を尽くすことが必要だと言っている」と若い高校生にアドバイスを送りました。

シンポジウムが終わった後、渡邊くんは「少しずつでも自分自身を変えていき、そして社会を変えられる人間になりたい」と私に語ってくれました。渡邊くんは、福島県の偉大な先輩の功績を辿りながら、また、福島高校や安積高校の同世代の高校生との交流をとおして、自分自身としっかりと対話しているようです。渡邊くんの今後の活躍に期待したいと思います。

最後に、このような有意義な研修を与えてくださった朝河貫一博士顕彰協会の皆さまへ感謝をいたします。