あさか開成 校長雑感

校長より

活動優秀校公演

週末12月15日(日)、南相馬市のゆめはっと(南相馬市市民文化会館)で第38回福島県高等学校総合文化祭「活動優秀校公演 ~ふくしまをつなぐ2019~」が開催されました。

平成23年(2011年)、本県で開催された全国高等学校総合文化祭(ふくしま総文)は、震災後5ヶ月後の開催でしたが、困難から立ち上がろうとする本県の生徒諸君及び教職員の強い意志のもと、奇跡的に開催することができました。その後、本県の高校生の芸術文化活動が全国レベルでも顕著な成績をおさめるようになり、その躍動する本県高校生の姿を県民の皆さまに知っていただく機会として始まったのが、この「活動優秀校公演」です。平成27年の会津開催を皮切りに各地区をまわり、これまで、相双地区での開催を目指して、復興・創生へと向かう希望を、いわき、県南、県北とつないできました。今回の開催で、やっと相双地区に「思いをつなげ」、「ふくしまをつなぐ」ことができたというわけです。

その記念すべき相双地区での「活動優秀校公演」に、今年度の第9回フラガールズ甲子園で最優秀賞・文部科学大臣賞を受賞した本校フラ・タヒチアンダンス同好会『ALOHA』も参加しました。

今回、本校フラ・タヒチアンダンス同好会『ALOHA』が発表したものは、1曲目が『Alaha Hula』で、この曲はフラガールズ甲子園の課題曲にもなっているものです。フラガールズ甲子園でも高い評価をいただいた楽曲です。2曲目は『Kaimana Hila』で、オワフ島ワイキキビーチを見渡す火山ダイヤモンドヘッドを意味しており、その美しい景色や情景を歌った楽曲です。そして、3曲目は『糸』です。東日本大震災の復興イベントである『福魂祭』でも披露している楽曲で、「人と人とのめぐり会いに感謝し、今という時間を大切にしたい」という思いを込めており、今回の公演のコンセプトである「思いをつなげ」、「ふくしまをつなぐ」にぴったりな曲ということで選曲したそうです。

私たちの笑顔で、少しでも多くの人たちが笑顔になれるようにと全力で踊ったようです。いかがだったでしょうか。

思わず手に取る、この一冊

昨日、放課後、3年生の図書委員の溝井梨華子さんと松本彩花さんが、できたてほかほかの「図書館だより」を持ってきてくれました。

今回は、冬期休業中の長期貸し出しが始まったことを知らせるもので、「思わず手に取る この一冊」の特集が組まれていました。

溝井さんと松本さんの「思わず手に取る この一冊」としての推薦は、湊かなえさんの『リバース』、ダニエル・キイスさんの『アルジャーノンに花束を』でした。

「イヤミスの女王」と呼ばれる湊かなえさんですが、私は、最近、湊さんの新たなジャンルの小説を読みました。『ブロードキャスト』です。爽やかな青春ドラマでした。湊さんのことだから、この辺で人間関係が崩れ、心の闇がでてくるのかと思いきや、最後まで爽やか青春ドラマでした。舞台は高校放送部、運動部をやめた主人公がラジオドラマへのめり込んでいく小説です。放送部、そして、ラジオドラマへの見方が、大きく変わった小説でもありました。ちなみに、『リバース』はイヤミスです。最後の、最後で、大どんでん返しが起こります。落ち込みました。

『アルジャーノンに花束を』は、20年以上前に読んだ記憶がある本です。こんなところで出合うとは思ってもいませんでした。『アルジャーノン』を読むと、キューブリックの『時計仕掛けのオレンジ』を思い出してしまいます。強制的な手段での矯正によって人を変えることは不可能であり、人を変える手段として有効な、かつ、最大のものは教育であると思っています。

最後に、今年の私の「思わず手に取る この一冊」を紹介しましょう。ベタですが、瀬尾まいこさんの『そして、バトンは渡された』です。「こんな家族ないよ」という批判が聞こえてきそうな小説ですが、私は心温まる傑作であると思っています。特に、義理の母である梨花の生き方がすごいと思います。日本は、どうしても、血縁という関係性を重視しがちですが、人と人のつながりはそれだけではありません。また、『バトンを渡す』という題も、平成から令和という新たな時代を迎え、とても良い題だと思います。今我々に求められているのは、子や孫の世代に誇れるようなものを残すこと、つまり、バトンを渡すことが大切だと思いました。

きらびやかなイルミネーションも素敵ですが、心に小さな希望を灯をともすことも大切です。自分の心に残る一冊を、手に取りましょう。

つくってミルク

福島県牛乳普及協会主催の令和元年度牛乳・乳製品利用料理コンクールで、県大会に出場した10名の生徒たちの作品の料理レシピ集が完成したようです。

県大会で優秀賞、東北大会では審査員長特別賞に選ばれた中川翔月さん、そして、優良賞に輝いた小林海斗くん、横山碧都くんの作品レシピが掲載されています。中川さんが、東北大会まで出場したことは、大変うれしいことです。しかし、それ以上に、中川さんが、今年度本校全体で取り組んできた「NO プラスティック」を、料理という分野で、どのように表現しようかと考えてくれたこと、また、料理という分野に対して、男子生徒がしっかりと向き合ってくれたこと、これらのことは、私にとっては何事にも代えがたい喜びでありました。

高校卒業後、一人暮らしを経験せざるを得ない男子生徒も多いはずです。また、今の時代、結婚後には家事を男女でともに分担していくと考え方は一般的になっています。料理をつくり、裁縫ができ、子育てを共に考えることは、性別を問わず、最低限の心得になってきているのもしれません。

今回、福島県牛乳普及協会より許可をいただき、本校生徒のレシピ集をホームページに掲載します。是非、気になった作品がありましたら、ご家庭でもお試しいただきたいと思っています。

料理関係では、昨日の福島民報新聞に、大きく栗林さんの『里いもスティック』の試食販売の記事が掲載されていました。来年1月の本格メニューに向け、順調に進んでいるようです。

またまた、生徒に感謝です。

(レシピ集の表紙)

(中川さんのレシピ)

(小林くん、横山くんのレシピ)

書くこと

本日まで、2年生は、修学旅行の代休となっていました。明日からは、1週間ぶりに、全校生徒がそろうことになります。ワクワクです。

さて、本日12月12日(木)、1年生は6校時に表現力養成講座が開催されました。

自分の考えていることを的確に表現するためには、「知識」と「時間」が必要です。

「知識」とは本を読み、基本的な考え方、語彙、論理構成力などを身に付けるということです。しかし、若い頃は読書が体験に追いつかないため、表現が舌足らずのものになってしまうのは仕方のないことだと思っています。「しっかりと本を読め、特に必要なのは新書本だ」と言いたいところですが、それが簡単でないことは自分がよく分かっています。ノーベル賞をもらった吉野さんは特別です。では、どうすれば良いのでしょう。まずは、教科書の評論文でいいので、しっかりと読み込みましょう。高校3年生になり、必要を感じれば、自然と新書本や専門書にも手を出すようになるので心配しないでください。今は、少し難しいなと思っても、読み込む努力をし、できれば、単に教養を身に付けようとするだけでなく、作者と対話をしてください。そのことを繰り返していくと、感性が磨かれ、自分の考え方に多くの気付きや視点がうまれるようになってきます。

「時間」とは、意識して、書くことを繰り返し行うことです。意識してが大事です。意識してとは真剣にということです。書くことに慣れてくると、意識しなくても、ある一定の文字数が書けるようになってきます。しかし、先ほども述べましたが、決定的に基本的な知識、語彙力などが不足しているこの時期に書いた文章は、まとまりがないものです。私は、書くことの基本的な機能は、自分の体験や考えを整理することだと考えています。自己の体験や考えの意味を明らかにしていく思考過程が、「書く」という行為の中には含まれています。また、書かれた言葉は、紙の上で定着し、時間を越えることができます。つまり、それを何度も見返すことによって、不安定なものにその都度改善を加え、より確実なものへとしていくことができるのです。「書く」という行為は自己との対話であり、対話によって思考を深めることができるのです。だから、書くことに真剣に向き合う必要があるのです。

1年生のみなさん、自己の体験をしっかりと書いたり、話したりしましょう。

ノーベル賞

昨日12月10日(火)、修学旅行が無事終了しました。

昨日の19時少し前に、生徒の帰宅を見届けた引率の先生方が学校に到着しました。団長である教頭先生より、生徒とたくさんの想い出とともに無事帰国した旨の報告がありました。生徒たちはどんな想い出をつくったのでしょうか。早く会いたいところではありますが、次の登校は金曜日です。お土産話が楽しみです。

さて、12月10日(日本時間では11日未明)、ストックホルムのコンサートホールでノーベル賞の授賞式が開かれ、吉野彰さんがスウェーデン国王よりメダルと賞状が授与されました。12月10日は、アルフレッド・ノーベルの命日でもあります。1896年12月10日にアルフレッドは死去しました。その1年ほど前、アルフレッドは「全財産により基金を設立し、人類のために最大の貢献をした人たちに、賞の形で分配されるものとする」という遺言を残しています。

皆さんも知っているとおり、アルフレッド・ノーベルは、ダイナマイトの発明で有名な人でもあります。1866年、今まで不安定だったニトログリセリンを、安定的に使用できるようにしたダイナマイトを発明したのです。アルフレッドは、その研究過程で弟を事故で失っています。発明されたダイナマイトは、岩石の破壊、トンネル工事などに使用され、今までの土木工事を変えるものとなりましたが、兵器としても開発・使用されるようになりました。日本が関係する戦争では、日露戦争での旅順攻撃が最初だと言われています。

さて、郡山市とアルフレッド・ノーベルの関係はどのようなものでしょうか。明治19年(1879年)から始まった安積疏水と深い関係があります。安積疏水の建設には、当時最新鋭の技術が使用されたと言われています。当時は、非常に高価だったダイナマイトの使用もその一つです。安積疏水の最大の難関は奥羽山脈に全長585mのトンネルをとおすための掘削工事でした。硬い岩石を砕くために使用されたのがダイナマイトでした。

今年度後半のテーマは、「平和との共存」です。

現在、貧困、飢餓、地球温暖化など戦争以外で、我々の「平和」を脅かす事態が数多く起きています。これらのことは、科学技術の発展と無関係のものではありません。広島・長崎への原爆投下は日米で違った意味で捉えられています。原子力発電所も、立場の違いで、捉え方も違ってきます。科学技術が真に平和に貢献できるものにしたいのであるならば、我々は、その科学技術を悪用されても、それを覆せる更なる科学技術と知識と知恵をつくり出していくことが必要なのかもしれません。

ノーベル賞授賞式、そして、時を同じくして、COP25が開催されています。令和元年最後のとき、「平和」について考えるときかもしれません。